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【自他動詞の獲得・誤用研究】研究の時系列(2020年7月17日)

執筆者の写真: kido1221kido1221

Bowerman (1974) (誤用研究) 英語を母語とする子どもが他動詞の代わりに自動詞を用いる誤用を指摘

・Daddy go me around. (2;8) (= make me go around)

・I'm gonna fall this on her. (2;9) (= drop this on her)

・Don't eat her yet. (3;8) (= feed her)


Figueira (1984)(誤用研究) ポルトガル語における他動性に関する誤用を報告


伊藤 (1990: 69)(誤用研究) 発達の途中段階にある子供が「自己中心性」を持っているために自動詞表現が他動詞表現よりも先に獲得されると指摘


他動詞を自動詞で発話

・(ブランコ)止まって (3;11) (=止めて)

・熱いから、冷めるんだ (3;0) (=冷ます)


Berman (1993)(誤用研究) ヘブライ語における他動性に関する誤用を報告


Pye (1994)(誤用研究) キチェ語における他動性に関する誤用を報告


Nomura and Shirai (1997)(誤用研究)

Sumihare, 1;11-2;4 の自然発話を分析

自動詞を他動詞の意味で用いるだけでなく、その逆の他動詞を自動詞の意味で用いる誤用も観察されることを示した。


・初期段階には自動詞がトークン数・タイプ数両方において他動詞を上回っていること

1.

・「抜く」が「抜ける」の意味で用いられること

・「固める」が「固まる」の意味で使われること

2.

・「開く/開ける」の自他動詞について双方向で誤用が見られること。

3.

・誤用が観察される前にすでに「開く/開ける」の動詞が正しく使われていることを示す発話があること。


誤用が起こる要因は、獲得されていない語彙の代用として誤用が起こるのではなく、すでに獲得されている語彙をレキシコンから引き出し活性化することの難しさによるものであると指摘

子どもの自他動詞の誤用は、言語知識の問題ではなく言語処理・言語運用の問題であると結論づけた。


Suzuki (1998)(誤用研究)

実験研究

22人の日本語児(年齢3;5―4;11)を対象とし有対自他動詞10ペアを含んだ発話を引き出す実験

子どもの自他動詞の誤用は双方向的であることを指摘

その方向は動詞の非能格・非対格の区別と連動

・自動詞を他動詞の意味で用いる誤用はほぼ非能格動詞と他動詞のペア

・他動詞を自動詞の意味で用いる誤用はすべて非対格動詞と他動詞のペア


大津 (2002:185)(誤用研究)

他動詞を自動詞で発話

・お父さん、窓、開いて (3;11) (=開けて)


Tsujimura (2008)(誤用研究)

Aki (1;6-3;0) の発話データを分析

有対自他動詞の自動詞の方が語幹を共有する他動詞よりもそのトークン数が上回っていることを示した。

また,その自動詞の中でも,状態変化や場所の変化を意味する自動詞の獲得が早いと報告


Fukuda and Choi (2009)(誤用研究)

日本語児4人,韓国語児3人の発話とそれぞれの養育者からのインプットとを比較

どちらの言語環境においても,子どもはその養育者の発話に含まれるよりも多くの自動詞を発話

Intransitivity Bias Hypothesis (2009: 621) を提案

一般的に子どもが自動詞を使用する傾向が強い


Yamakoshi and Jorinbo (2013)(誤用研究)

実験研究

「回る/回す」「倒れる/倒す」「温まる/温める」「転がる/転がす」の4ペアを刺激文

・2~4才児において他動詞の方が自動詞よりも正答率が低いという結果を示し,自動詞よりも他動詞の方が獲得が遅いと主張した。この結果に対しては,Harley(2008)などで示されている自他動詞の構造の複雑さの違いに起因するのではないかと推察


岡部 (2018)(誤用研究)

子どもの自他動詞の誤用は双方向的であることを指摘

Jacobsen (1992) に基づいて分析した結果、タイプIのみで自動詞を他動詞で使う誤用を観察

子どもは、有対自他動詞の獲得がまだ完全ではない時期には、発話する自他動詞を選択する際に、語幹に付加する接辞が形態的に単純な方を選択する傾向にある。形態的複雑性が同程度である場合は、使役の接辞(-s-, -as-, -os-)がより複雑であると捉えられる。と提案



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